大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和32年(あ)1659号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人佐治良三の上告趣意第一点について。

同趣意中、法人税法四三条により追徴税を課せられるのは懲罰的制裁であって、その場合更に同法四八条所定の逋脱犯として罰金刑に処することは、二重処罰であって、憲法三九条の禁ずる所であり、これを是認した原判決は違憲であると論ずる所がある。

しかしながら、法人税未納の場合所論追徴税を課するのは、行政上の措置たるにとどまり刑罰としてこれを科するものではなく、その場合法人税法四八条一項所定の逋脱犯を構成するときは、刑罰たる罰金に処しても、憲法三九条の規定に違反するものでないことは、当裁判所の判例とする所である。(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日大法廷判決、民集一二巻六号九三八頁。)さればこれと同趣旨に出た原判決は正当であって、論旨は理由がない。

その余の上告趣意は、要するに原判決において直接適用せられて居らない法令につき、違憲を主張し或は原審の解釈適用の違憲を論ずるものであり、しかもそのことが原審において主張判断を経て居らないのであるから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点について。

論旨は、原判決の量刑につき判例違反を主張するにあるけれども、原判決に、引用の判例に違反する迹がないのみならず、論旨の実質は、量刑不当の主張に帰するのであって同条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員の一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例